ロードバイク小説「サクリファイス」(近藤史恵)シリーズ5冊を読んだ感想

ロードバイク雑記

思わず2周読みました。

こんにちは!

ロードバイク好きなら必読と言えるロードバイク小説、「サクリファイス」(近藤史恵)シリーズ5冊を呼んだ感想を書きます。

「サクリファイス」シリーズとは

「サクリファイス」シリーズは、小説家の近藤史恵さんが書かれたロードバイク小説です。

2022年7月時点で、以下の5冊がシリーズとなっています。

「サクリファイス」シリーズ
  • 「サクリファイス」(2007年8月)主人公:白石誓
  • 「エデン」(2010年3月)主人公:白石誓
  • 「サヴァイヴ」(2011年6月)短編集
  • 「キアズマ」(2013年4月)主人公:岸田正樹
  • 「スティグマータ」(2016年6月)主人公:白石誓

ご覧いただくとわかるように、途中で主人公が別人になります。

また、3冊目に短編集が挟まっています。

サクリファイス(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な...
エデン(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
あれから三年──。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか? 前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想...
サヴァイヴ(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは──(「プロトンの中の孤独」)。エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。『サクリファイス』シリーズ...
キアズマ(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのに―—走る喜びに突き動かされ、祈りをペダルにこめる。自分のため、そして、助けられなかった...
スティグマータ(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
あの男が戻ってきた。三度の優勝を誇ったもののドーピングで全てを失った、ドミトリー・メネンコが。ざわめきの中、ツール・ド・フランスが開幕。墜ちた英雄を含む集団が動き始める。メネンコの真意。選手を狙う影。密約。暗雲を切り裂くように白石誓(ちかう)は力を込めペダルを踏む。彼は若きエースを勝利に導くことができるのか。ゴールまで...

読後の感想

読後の感想を一言でいうと、

「よくぞロードバイクを題材にここまで面白い小説を書いてくださった」

というものです。

ロードバイクの醍醐味はいろいろあると思いますが、このシリーズでは

「チーム競技であるロードレースにおける、アシスト務める人間の心境」

が丁寧に描かれています。

主人公の白石誓も山岳アシスト。

主人公が「アシスト」役というところに、深い味わいがあります。

私がロードバイクにはまるきっかけになった漫画「弱虫ペダル」では、主人公は山岳エースでした。

準主人公級のキャラも、オールラウンダーのエースだったり、スプリントのエースだったりと、少年漫画らしい、わかりやすいエース対決の構図がありました。

しかし、「サクリファイス」シリーズは、

エースが脇役で、アシストが主役

です。

エースが優勝しようが、敗退しようが、あくまでアシストの動きに焦点が当てられ続けます。

このあたり、大人向けの深い味わいのある作品だなと思いました。

シリーズ5冊目の「スティグマータ」では、

「ピークを過ぎて競技人生の終わりに近づきつつあるスポーツ選手の心境」

が丁寧に描かれています。

このあたりも明らかに大人向けの主題だなと思いました。

著者のロードレースに対する理解度も素晴らしく、毎年のようにグランツールをテレビ観戦し、実況の解説を聞いている私のようなロードレースファンが読んでも、なんの違和感もない描写がなされていました。

全体的に、非常に共感できるシリーズで、思わず2周読んでしまいました。

おすすめの読む順番

私は発行順に読んだのですが、3冊目の短編集「サヴァイヴ」に突入したときに、

「ん、ちょっと期待していたのと違うな」

と思いました。

山岳アシストの白石誓を主人公とした読み応えのある長編小説を期待していたところ、短編集だったので、ちょっとがっかりしたのです。

とはいえ、本の内容自体は非常に面白く、味わい深いものでした。

その後、4冊目で主人公が変わったときも、

「ん、ちょっと期待していたのと違うな」

と思いました。

山岳アシストの白石誓の物語が続くものだと思っていたところ、まったく違う主人公の物語だったので、ちょっとがっかりしたのです。

とはいえ、こちらも本の内容自体は非常に面白く、シリーズの中でも屈指の出来だとは思いました。

最後に、5冊目で主人公が元に戻ったとき、

「白石誓が帰ってきた〜♪」

と思いました。

そして、むさぼるように5冊目を読み終わり、

「ふう、満腹♪」

という気分になりました。

この経験をふまえ、私がおすすめする読む順番は、以下のとおりです。

「サクリファイス」

→「エデン」

→「スティグマータ」(ここまで主人公:白石誓)

→「サヴァイヴ」(白石誓と周辺の人の短編集)

→「キアズマ」(主人公:岸田正樹)

この順に読むことで、本シリーズのメイン主人公である「白石誓」の活躍を年代順にまっすぐ追えるようになります。

もちろん、発行順に読んでもなんの問題もありませんので、お好みでお選びください。

まとめ

「サクリファイス」シリーズは、ロードレースにおけるアシストの心境を主題とした、大人向けの非常に面白い小説でした。

多くのロードバイクファンの方に読んでいただきたいと思います。

味わい深かったです。

サクリファイス(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な...
エデン(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
あれから三年──。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか? 前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想...
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ふとしたきっかけでメンバー不足の自転車部に入部した正樹。たちまちロードレースの楽しさに目覚め、頭角を現す。しかし、チームの勝利を意識しはじめ、エース櫻井と衝突、中学時代の辛い記憶が蘇る。二度と誰かを傷つけるスポーツはしたくなかったのに―—走る喜びに突き動かされ、祈りをペダルにこめる。自分のため、そして、助けられなかった...
スティグマータ(新潮文庫) サクリファイスシリーズ
あの男が戻ってきた。三度の優勝を誇ったもののドーピングで全てを失った、ドミトリー・メネンコが。ざわめきの中、ツール・ド・フランスが開幕。墜ちた英雄を含む集団が動き始める。メネンコの真意。選手を狙う影。密約。暗雲を切り裂くように白石誓(ちかう)は力を込めペダルを踏む。彼は若きエースを勝利に導くことができるのか。ゴールまで...
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