【名曲名盤紹介】ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 作品38

ブラームス:チェロ・ソナタ第1番クラシック・ジャズ

ブラームスのチェロ・ソナタってどうなんだろう…

こんにちは!

数あるクラシックのチェロ曲の中でも私のお気に入りの1曲がこちらの「ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 作品38」となります。

ブラームスらしい哀愁に満ちたメロディが非常に美しく、何度も聴きたくなる曲です。

今日はこの曲の聴きどころをご紹介していこうと思います。動画でもご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

第1楽章

第1楽章はホ短調のソナタ形式です。

第1主題、第2主題ともに短調の哀愁に満ちたメロディです。静かな第1主題と激しい第2主題が見事なコントラストを成しています。

第1主題

第1楽章第1主題
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第1楽章 第1主題

第1主題は、ホ短調で弱音でそっと弾き始められます。チェロのふくよかな低音が美しいですね。後半部分で低音から高音に駆け上がり、将来の盛り上がりを期待させます。

私は、この冒頭の部分を聴くたびに、中世のウィーンの街でブラームスと一緒に散歩をしているような気になります。

「さあ、takくん。一緒に歩こうではないか。実は、僕には好きな女性がいてね・・・」

ブラームスがそう話しかけてくるような気がするのです。

その後、チェロが高音の同音連打で少し盛り上がりを見せた後、下降音形とともに静まると、ピアノで再び第1主題が奏でられます。チェロで聴いてもピアノで聴いてもきれいなメロディです。落ち着きます。

しばらく主題の拡張が続いた後、決然と第2主題が現れます。

第2主題

第2主題は、ロ短調でフォルテで始まります。

第1楽章第2主題
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第1楽章 第2主題

第2主題は、私がこの曲の中でもっとも好きなメロディです。第1主題の茫洋とした曲調から変わり、決然とした雰囲気を感じます。最初の2音(F#-B)でなにかを強く決断し、それを頭の中で確かめるかのように、4音(F#-B-D-B)のフレーズの繰り返しが出てきます。ピアノとのシンコペーションが織りなすリズムも大変ドラマティックです。

「こんなにも愛しているのに、僕の気持ちは決して成就しない。成就しないんだ・・・」

ブラームスのそんな声が聞こえてきます。

展開部・再現部

展開部・再現部では、第1主題、第2主題と関連する音形が展開・再現されます。

まず、夢見心地に第1主題が展開されます。その後、第2主題がピアノで分厚い和音で演奏されるシーン(126小節〜)が私は大好きです。自らの決断と、それに伴う運命の動きが感じられ、感動的です。チェロの追いかけるようなハーモニーも、運命を追いかける影のようで最高です。

第1楽章展開部
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第1楽章 展開部 126小節〜

第1楽章の最後は消え入るようにピアニッシモで終わります。

「やはり、諦めるしかないのだろうか・・・」

第2楽章

第2楽章はイ短調のメヌエットです。

3拍子で、ブラームスらしい素朴な舞曲が始まります。しばらくの間、メロディや伴奏が形を変えて何度も現れ、音の遊びが続きます。典雅というより土の香りがする舞曲です。

第2楽章メヌエット
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第2楽章 メヌエット

中間部(トリオ)は、ふと何かに気づいたかのようなさえずりで始まります。その後は流れるように上下する美しいメロディが続きます。ピアノによる幻想的なメロディです。私はこのトリオも大好きです。ブラームスの室内楽曲は緩徐楽章の中間部にハッとするような美しいメロディが来ることがありますね。

第2楽章トリオ
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第2楽章 トリオ

第3楽章

第3楽章はホ短調のフーガ風の曲です。

バッハのフーガの技法からコントラプンクトゥス XIIIを引用しているとのことです。確かに同じリズムですね。メロディはオクターブの跳躍から始まり、3連符の荒々しい強奏が続きます。

第3楽章冒頭
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 第3楽章 フーガ

その後、そよぐ風や小川の水の流れを感じさせるような曲想もありますが、主題がカチッとしており、フーガという形式もあって、全体的に構築美を感じます。

最後にプレストの急速な終結部が来て、大きく盛り上がって終わります。

おすすめ盤

「リフレクション」エレーヌ・グリモー

この曲のおすすめ盤は、エレーヌ・グリモー(p)とトゥルルス・モルク(vc)の2人による演奏です。

グリモーは同曲を2回録音していますが、私のおすすめはこちらの旧盤です。

とてもロマンティックな演奏です。どちらかと言えば、ピアノが主体でチェロが伴奏のように聴こえる演奏です。

グリモーはフランス出身のピアニストで、左手の低音と内声が充実した情熱的な演奏を行うタイプのピアニストです。この曲では高音のきらびやかさと低音の重々しさが両立しています。たゆたうような空気感と、決然とした荒々しさが感じられます。少しフランス風の香りも感じられます。グリモーのブラームスは本当にいいですね。相性がいいと思います。

トゥルルスはノルウェー出身のチェリストです。北欧出身らしく透明感のあるチェロです。必要以上に重たくならず旋律の歌いまわしが叙情的です。チェロの音がとてもきれいで、よく鳴いています。

アルバムにはシューマンのピアノ協奏曲、クララ・シューマンの歌曲、ブラームスのラプソディがカップリングされています。いずれの曲も名演です。

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